金属は硬いというイメージが一般的ですよね。しかし近年、手の力で曲げることのできる柔らかい金属の食器が注目されています。その金属とは、錫(すず)です。
この記事では、金属製でありながら食材などの形に合わせ成形することができる、錫製の曲がる食器についてまとめました。錫製品を扱う、国内の有名ブランドの人気商品についてもご紹介します。
曲がる食器で人気の「錫」の特徴
- 酸化しない
- 錆びない
- 安心で安全な金属素材
- 抗菌・殺菌作用がある
- 柔らかい
- 変形しても手の力で形を調整できる
- 飲み物の味がまろやかになる
- 保温や保冷機能に優れる
酸化しにくく錆びにくい金属として知られている、錫。錫は空気中や水中でも錆びない、とても特殊な素材です。変色が少なく、美しい光沢が長期間保たれるという特徴から、古くから装飾品や神に捧げる宝物として使用されてきました。
錆びにくいということは有害物質を溶出しないので、人体にとって安心で安全な素材であることを意味します。錫には錫イオンの効果により抗菌作用があることも知られており、花瓶に使うと切り花が長持ちしたり、水が浄化されることもわかっています。
また、イオン効果や殺菌作用がある錫は、お酒の味がまろやかになることでも知られており、焼酎工場などの蒸留器の管にも使われているほどです。
そして、錫の大きな特徴のひとつは、手の力で簡単に曲げることができるほど柔らかいこと。落として変形したとしても割れにくく、変形した部分を手で修理ができるという利点があります。純度が高く、錫が含まれている割合が多いほど、柔らかくなります。
そういった特徴を生かした錫を使った、まるでアートのように見える食器が人気です。
錫は希少価値が高く、金や銀に次いで高価な金属ですが、 現在では錫の優れた特性を生かした製品が数多くあり、日常生活に取り入れやすい素材となっています。
なぜ錫の食器は曲がるのか
金属と言えば、硬いものというのが一般的なイメージでしょう。
しかし、錫は金属の一種でありながら柔らかいことが特徴で、手の力で曲げることも可能です。特に純度100%の錫は非常に柔らかく、手で簡単に曲げることができます。
硬い金属でありながら、なぜ錫は、ふんわりと曲げることができるのか。
その理由は、錫が金属としては大変柔らかいことが挙げられます。
錫は指や布、紙などで触れても傷がつくほど柔らかい素材です。
落としたり衝撃を与えるとすぐに変形してしまいますが、その柔らかさを生かして変形しても容易に修復することができます。
曲がる素材の錫はどのような食器に使われるのか
錫は金属特有の嫌な臭いがしないため、食器製品の素材としても利用されています。
また、飲み物の温度を保つ機能に優れているため、冷たいものは冷たいまま、温かいものは温かいまま楽しむことができるのも、錫が食器に使わる理由の一つでしょう。
さらに、錫の器に入れると雑味が取れ、お酒がまろやかになり美味しくなるとも言われています。
フルーティーで甘い香りがすると言われている錫の香りは、飲み物やお酒の味をより一層引き立てます。
このような特徴を生かした錫が使われているテーブルウェアには、次のようなものがあります。
- タンブラー
- ジョッキ
- ぐい呑み
- ビアカップ
- 棗(なつめ)
- ワインクーラー
- ちろり
- スプーン
- 箸置き
錫製の曲がる食器は通販で購入できる
注いだ飲み物の美味しさを増し、自由に成形することも可能な錫製の食器。銀白色に輝く姿も美しく、安い値段ではありませんが自宅用や贈り物など、アートのような曲がる錫の食器を手に入れたいと思う方も多いでしょう。
錫製の曲がる食器は、通販でも購入することができます。テーブルセッティングがワンランクもツーランクもアップする錫製品を扱っている国内の3大有名ブランド、「能作」と「大阪錫器」、「syouryu」についてご紹介します。
いずれのメーカーも公式オンラインショップがありますので、気になる方はショップにアクセスしてみると良いでしょう。
能作(のうさく)
大正5(1916)年に富山県で仏具や茶道具など鋳物の製造をスタートさせた株式会社能作は、錫の柔らかさを生かした優美で繊細な「曲がるKAGOシリーズ」などの商品で知られています。「より能(よ)い鋳物を、より能(よ)く作る」が企業理念の能作では、長い歴史に培われた鋳物の技術を生かし、確かな品質の錫製品を提供しています。
能作の取り扱い商品
商品へは、名入れやのし掛けなどにも対応しています。桐箱の用意もあり、ギフトにも最適です。
- 片口・ぐい呑
- カップ・タンブラー
- 皿・小鉢
- 箸置・カトラリーレスト
- シャンパンクーラー
- デキャンタ・ピッチャー・マドラー
- おしぼり皿・ソープトレー
- 花器・苔盆栽・香立・茶さじ
- ベル・風鈴
- 指輪・ペンダント・ピアス・ブローチなどアクセサリー
大阪錫器(おおさかすずき)
昭和24(1949)年に大阪で錫の製造を創業した大阪錫器は、茶器や酒器などの飲み物に関するアイテムが充実していることが特徴です。
国より、大阪府大阪市周辺で作られている金工品伝統的工芸品の「大阪浪華錫器(おおさかなにわすずき)」に指定されています。職人の手で加工を行うため一点一点に微妙な違いがあり、金属ですがハンドメイドのあたたかさを感じることができます。
大阪錫器の取り扱い商品
桐箱入りのギフトセットも充実しており、文字彫刻やのし掛けにも対応しています。
- タンブラー・ジョッキ・ワインカップ
- 酒器セット・ぐい呑・徳利・ちろり・晩酌セット
- 富士山シリーズ
- 箸置き・銘々皿
- ペントレイ・朱肉入れ
- 茶壺・急須・茶托・茶器揃え
- 花瓶
- 銚子・屠蘇器
- 単盃・三重盃
- 神具
syouryu
明治42(1909)年に富山県で創業された「syouryu」は、寺院用のおりんを製造しているシマタニ昇龍工房が運営するブランドです。
syouryuの代表的な錫製品は、まるで折り紙のように自由に力を加えることができる「すずがみ」でしょう。
アートのように創造を楽しみながら、さまざまなシーンで活用できる幅広さが人気です。
すずがみについて
すずがみは、折り紙のように簡単に折ったり曲げたりできる錫製のお皿です。
何度もハンマーで叩くことで金属層が何層にも重なって繊維状になり、曲がることによる金属疲労を抑えることが可能になりました。
食器としてだけでなく小物を置いたり、花器として使用したり、自由に形を変えることができます。
サイズオーダーや名入れにも対応していますので、さまざまな使い方ができるでしょう。
錫製の曲がる食器の手入れ方法
曲がることが特徴の柔らかい素材、錫製の食器のお手入れ方法についてご紹介します。
日頃からお手入れすることで、温かみのある光沢や艶を長持ちさせることができますよ。
- 使用後は柔らかいスポンジでキッチン用中性洗剤で洗う
- 洗った後は柔らかい布などで水気を完全に拭き取る
- ほこりや汚れは柔らかい布で円の周囲にに沿ってやさしく拭く
- 光沢が鈍くなってきた時は、重曹で磨く
錫製の食器を使う時の注意点
- 熱伝導率が高いため、熱いものを入れた時は表面が熱くなりやすいので火傷に注意する
- 高温になる可能性があるので、食器洗浄機や乾燥機は使用しない
- 低温により錫が変質する恐れがあるため、冷蔵庫での長時間の保存や冷凍庫は使用しない
- 変色の原因になるため、酸味の強いものや色の濃いものを長時間入れたままにしない
- 亀裂や破損の原因になるので、過度に曲げない
- 融点が低いため、火気の近くには置かないようにし、直火で使用しない
- 金属なので、電子レンジの使用は不可
- 傷が付くので、硬いタワシなどでこすらない
まとめ
見た目も美しい錫の食器は、好きな形に曲げることができる上に、飲み物の美味しさをアップさせるなど嬉しい特徴がたくさんありました。昔ながらの製作方法で一つ一つ丁寧に作られている曲がる錫の食器の使い心地を、ぜひ一度体験してみてはいかがでしょうか。