古くから王侯貴族たちに愛されてきた銀食器には、毒に反応して変色するという特徴があると言われており、長きに渡り愛されてきました。
そこでここでは、銀食器が毒に反応して変色するのは本当か、また銀食器が毒で変色する理由、銀食器を変色させる毒の種類一覧をご紹介します。
また、銀食器には毒を抑える効果もあるのかや、現代のヒ素の成分でも銀食器に影響を与えるのかどうかについてもお伝えしています。
銀食器が毒に反応して変色するのは本当か
歴史的に見ても我々人間にとって、もっとも身近な金属のひとつは銀ではないでしょうか。
銀は食器としても古くから広く使われてきました。
そんな銀食器には、毒に反応すると変色するという特性があり、そのことから権力者やヨーロッパ貴族が毒殺対策として愛用していたと言われています。
また当時から高級であった銀食器は豊かさの象徴であり、常に手入れされた銀食器は美しく輝き、来客をもてなす際にも銀食器を使うことで、毒が入っていないということをアピールしていたようです。
また銀には塩素の約10倍ともいわれる優れた殺菌力があり、銀食器を使うと食べ物が腐りにくくなる効果もあるようです。
そのため銀イオンの効果を売りにした制汗スプレーや、お風呂のカビを防止するくん煙剤などにも銀イオンの殺菌作用が応用されています。
なぜ?銀食器が毒で変色する理由
では一体なぜ銀食器が毒で変色するのでしょう?
ここでは具体的に銀食器が毒で変色する理由をご紹介していきます。
そもそも銀は変色しやすい金属です。
銀製のアクセサリーなどをお使いの方なら、使わずに置いておくだけでも黒ずんでしまうのをご存じでしょう。
それは銀がほかの金属に比べ原子レベルで安定していないためで、特に硫黄を含んだ物質に強く反応し、黒く変色します。
そして中世、毒殺を目的によく使われた毒はヒ素です。
ヒ素は無色で無味無臭のため食事に毒を入れられても見分け方がわかりません。
しかしヒ素には、硫黄の入った不純物が含まれており、この硫黄が銀と反応することで銀食器を黒く変色させるため、食器の色の変化により毒が入っていることに気づくことができたというのです。
NHKの番組でも、銀には毒によく用いられた硫黄の成分に反応して黒ずむ特性があったため、古くから上流階級の人々に愛されてきたということが伝えられています。
銀食器を変色させる毒の種類一覧
先述した通り、銀食器は硫黄成分との化学反応を起こすことで黒ずんでいきます。
銀食器を変色させる毒・毒性を含むものは以下になります。
- 硫黄
- 硫黄を含んだヒ素
- 塩素
ただし、ヒ素自体は銀は直接反応しないため、純度の高いヒ素の場合は反応しません。
また、塩素は銀と化合することで表面に塩化銀の膜ができるため真っ黒に変色してしまいます。
銀はハロゲン族の元素と化合し感光すると黒くなるので、毒ではありませんがイソジンやヨードチンキなどでも変色してしまいます。
また硫黄は空気中にも含まれており、銀製のアクセサリーが黒ずんでいくのは酸化ではなく硫化という反応によるものです。
ただし磨きあげればまたピカピカになるので、銀食器同様、しっかりお手入れをすることで長く使うことができます。
銀食器には毒を抑える効果もあるのは本当か
最初に書いた通り、銀には優れた殺菌効果があるため、食べ物が腐るのを遅らせる効果が期待できます。
また銀イオンなどの金属イオンには、殺菌剤としての効果を示す可能性もありますが、その場合には細菌やカビだけでなく、人間や他の動物の細胞にも影響を与える、毒物としての作用が出てしまう可能性もあるようです。
したがって毒を抑える効果があるというのはあながち嘘ではないものの、毒を抑える効果を持つものとして銀食器を実用化するにはまだ早いのかもしれません。
現代のヒ素の成分は銀食器に影響を与えない
先ほども純度の高いヒ素には、硫黄などの不純物が含まれていないため銀食器は反応しないと書きましたが、現代のヒ素も純度が高いため、銀食器に反応することはありません。
ただし、銀食器には古くから王侯貴族の食卓で長らく使われてきたという歴史があるため、今でも高級食器の代表として高級レストランなどでも大切に磨き上げられた銀食器が広く使用されています。
最後に
この記事では、時の権力者や貴族たちに愛され続けてきた銀食器と毒の関係についてご紹介してきました。
銀は硫黄などに反応して変色するということがお分かりいただけたと思います。
実は韓国の箸も日本の木製のものとは違い、銀でできたものが一般的ですよね。
それは戦乱の歴史がある朝鮮半島では箸に毒を察知する機能を求めていたからだと言われています。
ということは、その国の歴史が食器の素材選びにも関連しているということを示しているのですね。